
月曜の午後に黒い森でお茶を
黒い国の、黒い村に、黒い少女が住んでいて、
黒い朝には黒い太陽が、黒の眠りを妨げない様に、にい、と笑って昇ります。
黒い雄鶏が仕事を果す事に期待はしていないのに、その黒い喉で高く鳴くのを
黒いベッドで待っています。何時もと変わらぬ、黒い一日の始まりです。
黒く焼け焦げたパンを齧り、黒く滴る鶏肉を一羽丸々頬張って、黒い珈琲に舌鼓。
黒いカーテンの向うから、黒く差し込む朝日が、とても心地の良い時間です。
今日は待ちに待った月曜日。お茶会の日です。黒い友達との約束の日です。
一張羅の黒いスカートに、黒いカチューシャ。錆付いた黒い指輪。
いそいそと身支度を整えると、黒いバスケットを手にとって、黒い小屋を後にしました。
黒い村の黒い道を、真っ黒な靴で飛ぶ様に歩いて、黒い森を目指します。
黒い森の入り口で、黒い蛾がひらひら、と黒い少女を待っていました。
久し振りに顔を合わせた黒い友達と仲良く連れ立って歩いていくと
黒い草むらの影から黒い兎がひょん、と跳ねて、黒い飛蝗を潰してしまいました。
黒い兎は黒い髭をひくひく、とさせて言います。
「そんなに黒くてどうするの?」
黒い少女は答えます。
「だって神様ですら髪も、眼も、肌も黒いのよ。
時折、目玉の白がぎょろり、とするばかり。
私知っているのよ。きっと歯も黒いのだわ。」
黒い兎は黒曜石の瞳からタールの涙を流しながら、
「ああ、哀しい事だ。」
そう言うと、また黒い草むらの影にひょん、と跳ねていってしまいました。
途中、黒い狐と合流して仲良く歩いていると、黒い木の中から
黒い雄牛がのそり、と現れて黒く長い尾を振りながら言います。
「そんなに黒くてどうするんだい?」
黒い少女は答えます。
「だって空はこんなに黒くて、落ちてくる雨はまるで墨汁の様なんですもの。
土に染み込むたびに黒くなって、蒸発すればますます黒さが際立つの。
育つ野菜も肉も人も黒く育つわ。私何もかも知っているのよ。
足の裏から全て吸い上げるのだから。」
黒い雄牛は鼻から黒く煙る灰を吐き出して、
「君は薄情な奴だな。」
そう言うと、また黒い木の中にのそり、と行ってしまいました。
黒い蛇がにょろ、と追いつく頃には森の奥のそのまた奥まで辿り着いて、
黒いお茶会の始まりです。
幕は開いたばかりです。
嗚呼、何と言う愚かしさだろう。
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